額縁が、室内の飾りの一部として見られるようになったのは、十六世紀に入った頃と言われています。当時、額縁をデザインするための画家はほとんどいませんでした。しかし、絵に初めて付けられた額縁が非常に合っているという例も珍しくありません。例えば『アントワーヌ・バリスの肖像』を縁取っている額縁が、該当します。この絵は、1724年に、イアサント・リゴーが描いたもので、描かれているアントワーヌ・バリスはフランスの裕福な財務官でした。ボタンを外した状態のシャツや、束ねていないかつら、ゆったりとしたマントが穏やかな雰囲気を出している絵です。この穏やかな雰囲気の絵に、額縁という直線でできた要素も良い効果を生み出していることはもちろん、渦巻や蔓を使ったデザインがまた素晴らしいコントラストを見せています。この額縁はフランスの様式であり、さまざまなパターンがあります。