聖カタリナ修道院には、伝記イコンと呼ばれる『聖ニコラオスとその生涯』というものが保存されています。13世紀の初めに描かれたものだそうです。人物像を囲む幅の広い縁取りがしてあります。その縁取りはいくつもの画面に分割されています。それぞれの画面には、中央に描かれた聖人にまつわるエピソードが描かれています。その枠組みの絵画はまるでコマ送りのようにつながっていて、額縁として機能するだけでなく、中央に描かれた聖ニコラオスの生涯を伝記として、枠に描いているというわけです。ゴシック期のイタリアには、枠の上に聖書の物語やメダイヨンの中に聖人像を描いた額縁があるそうです。それは、こうような伝記イコンの枠がより洗練された結果、西方カトリックの教会の画家によってこぞって描かれたのではないかと考える研究者も多いようです。