マルガレーテの肖像について

『マルガレーテの肖像』は、鑑賞者を見つめるような視線を持っています。ヤン・ファン・エイクの特有の人物表現は、どこか遠い虚空を見つめるかのような視線の人物を4分の3正面の構図を暗い背景に描くものです。そんな中で数枚、視線を画家に向けているものがあります。

そのひとつが、妻を描いた『マルガレーテの肖像』です。特定の個人のための肖像画は、ルネサンス期のイタリアあるいはそれ以前にも描かれていました。

ただ、それらは完全な横顔か正面に向いたものを表現したものばかりです。この『マルガレーテの肖像』を縁取る額縁には大理石模様がトロンプルイユ技法によって描かれています。額縁の上下には、銘文が書かれています。

「わが夫ヨハンネスこれを完成せり」「わが歳33おのれの能う限り」と記されているそうです。額縁の裏側にも大理石模様が描かれています。